工場での生産ラインを自動化するFA(ファクトリーオートメーション)は、現代の製造業において欠かせない技術です。実は30年ほど前、私自身もFA用プログラムの開発に携わった経験があります。今回は、その頃の経験を振り返りつつ、FAの世界や工場現場の魅力をお伝えしたいと思います。ただし、現在の技術や環境は大きく進化しているはずなので、あくまで一昔前の話としてお楽しみください。
私が携わっていたのは、建設機械、製鉄、造船など、大規模な生産ラインを支える設備の開発でした。例えば、鉄板を正確なサイズに切断したり、製品の整形をしたり、工業用のロボットを動かすこともありました。プログラムは、生産ラインにおける「頭脳」とも言える存在です。ラインが停止すると大変なことになるので、しっかりと設計をして、一行一行コードを組み上げていきました。
生産ラインが完成して実際に機械が動き始める瞬間は、いつもワクワクしました。自分が書いたプログラムが動作し、目の前で製品が形作られていく光景は、まるで命を吹き込んでいるような感覚を覚えました。
FA用プログラムの開発では、プログラミングだけでは完結しません。機械や電気、さらには生産プロセスそのものに精通した多くの技術者との協力が必要不可欠です。電気技術者からはセンサーやモーターの制御に関する情報を共有してもらう、といった具合です。
こうした異なる分野のプロフェッショナルたちと一緒に作業を進める中で、自分の知らない知識や視点をたくさん吸収できたことは、大きな学びでした。また、専門性が異なる人たちと一つの目標を共有し、それを形にしていく過程には、言葉では表せない楽しさがありました。
当時の工場現場は、私にとって非日常的な雰囲気が満載でした。例えば製鉄所。圧延機にかける前の鉄の塊はけっこう距離が離れていても熱を感じます。造船所では、これから海を渡るであろう大きな船が、まるで鉄の巨人のようにそびえ立っていました。
製鉄所も造船所もとても大きく、工場内に線路が走っていたり、移動は徒歩では無理なので車を使ったりしていました。こうしたスケール感溢れる現場は、日常生活では目にすることはありません。そして、そこで働く人々や動き回る機械たちが、それぞれの役割を全うして一つの製品を作り上げていく様子は圧巻です。
工場現場での開発には、特有の課題がいくつもありました。その一つが、「鉄粉」と「ノイズ」です。
当時は、プログラムのデータをフロッピーディスクで持ち運ぶのが一般的でした。しかし、工場の現場では、細かい鉄粉が空気中に舞っていることが多く、これがフロッピーディスクにとって天敵でした。一度鉄粉が入り込むと、データが壊れてしまうこともしばしば。現場に行く際には、フロッピーディスクを何枚も予備として持参するのが常でした。
工場内では、さまざまな機械が動き回り、それが生じる電磁ノイズもまた厄介な存在でした。このノイズが通信に悪影響を及ぼすことがあるため、「ノイズに強い通信方法」を考える必要がありました。ノイズ対策を怠ると、通信が途切れて機械が止まる、というトラブルが発生する可能性もあったのです。
FA用のパソコンも、オフィスで使うものとは異なっていました。工場の現場では、耐久性が重要視されます。例えば、高温多湿の条件下でも壊れないような仕様が求められたりしました。そんな特殊な環境で使用されるパソコンは家電量販店などで販売している物とは違い、専用に設計された物でした。
FA用プログラムの開発に携わって感じたのは、「機械が動き回る現場の楽しさ」です。プログラム通りに動作する機械が、次々と物を作り出す様子は、何度見ても飽きませんでした。それはまるで、工場全体が一つの大きな生き物のようであり、私たち開発者はその生き物の心臓や脳を作っているような感覚でした。
現在のFA技術はきっと、AIやIoT(モノのインターネット)の導入によって、生産ラインの最適化や設備の管理方法がぐっと進化していることでしょう。機会があれば現代のFAの現場を見学してみたいものです。
FA用プログラムの開発は、異なる分野の技術者たちと協力しながら、機械を動かし、製品を生み出していく、とても刺激的な仕事です。30年前の話ではありますが、当時の経験は今でも私の中で色褪せることなく、ものづくりの楽しさを思い出させてくれます。
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