音声認識は現在、多くの分野で実用化され、スマートフォンの音声アシスタントや自動翻訳サービス、さらには医療やカスタマーサポート分野で活用されています。しかし、20年以上前は現在のような深層学習(ディープラーニング)技術が存在せず、音声認識システムの開発には多くのハードルがありました。本記事では、筆者が当時取り組んだ音声認識を活用したプロトタイプシステムの開発経験を振り返りつつ、当時の技術的背景や課題について解説します。
私が取り組んだのは、鉄道の切符販売機を音声で操作するプロトタイプシステムです。このシステムは、行き先の駅名を話しかけることで切符を購入できるというものでした。
例えば、「京都駅までお願いします」と話しかけると、「京都駅」の切符を発券する仕組みです。現在のように音声認識技術が日常的ではなかった時代に、このプロトタイプを実現するため、いくつもの技術的な工夫を凝らしました。
システムを構築するうえで、まず必要だったのが学習用の音声データの収集でした。音声認識システムが正確に動作するには、多くの音声データを解析し、その特徴を学習させる必要があります。私たちは次の手順で音響モデルを構築しました。
現在では、深層学習を活用した音声認識技術が一般的ですが、当時はそのような技術は存在せず、音声認識エンジンの性能は限定的でした。当時利用した音声認識エンジンは次のような特徴がありました。
当時の音声認識エンジンでは、極端に短い駅名の認識が特に難しい課題でした。一文字や二文字の駅名は音声波形が短く、他の駅名と区別しづらいためです。たとえば、「津」のような短い駅名の場合、認識率が上がりませんでした。
実際の切符販売機は、駅のホームや改札近くに設置されることが多いため、周囲の雑音が認識精度を大きく低下させました。人々の話し声や電車のアナウンス、貨幣が券売機内で移動する音など、さまざまな音が混ざる環境での運用は困難を極めました。
現在では、深層学習や大規模言語モデル(LLM)を活用した音声認識技術が主流となり、その性能は当時とは比べものにならないほど向上しています。
これにより、スマートフォンや自動運転車、さらには医療分野など、幅広い分野で音声認識が活用されています。当時は実現が難しかった技術も、現在では比較的簡単に利用できるようになりました。
20年以上前の技術を振り返ると、当時の開発経験は多くの学びをもたらしました。現在のような便利な音声入力技術が当たり前ではなかった時代に、プロトタイプを作る中で次のような教訓を得ることができました。
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